FEATURE VANとbeautiful peopleの関係を知る8つのキーワード

beautiful people 2011 AWコレクションのコンセプトは『rabbit fashion』。メンズ市場で主流の無骨で剛健な「ラギッドファッション」へのアンチテーゼとして、とてもやわらかく、しなやかなトラッドウェアを提案しようという意味合いです。少し軟派なトラッドファッションながら、プロダクトの作りは質実剛健。新たな価値観を生み出すためのアイデアとひらめきが詰まっています。

特筆すべきは日本のトラッドファッションのパイオニアである「VAN」とのコラボレーション。VAN創業者の故・石津 謙介氏はトラッドの日本的解釈から生まれた「アイビールック」の生みの親にあたります。トレーナー、スタジャンというお馴染みのファッション用語、TPOという生活様式を表す言葉も石津氏の提案によるものであることに驚きを覚え、「新たな価値観を提案し社会生活を向上させていきたい」というbeautiful peopleのブランドコンセプトを再度見つめ直すきっかけとなりました。

ここではbeautiful peopleとVANの共通項を8つのキーワードから解説していきます。古き良きものづくりに敬意を払いつつ、現代の視点とユーモアを注いだ新しい定番がここに。

1. 「RUGGED fashion」V.S.「rabbit fashion」

「RUGGED fashion」とは、無骨で剛健なクラフト感あふれる大人の男性のためのトラッドスタイルです。これに対抗したコンセプトがbeautiful peopleの「rabbit fashion」。ウサギのように思わず抱きしめたくなってしまうような質感、雪の中のウサギのような白、さらに、動物の中で最も繁殖行動を行うウサギのプレイボーイなイメージも取り入れ、軽さやチャラさと、素材に徹底的にこだわった質実剛健な作りを併せ持つ、新しいトラッドファッションを提案しています。そのなかで、60年代のアメリカからアイビースタイルを輸入し、日本のトラッドのパイオニアとなったVANとコラボレーションすることになりました。

2. 「DRESS DOWN」&「CASUAL UP」

VANが日本に紹介したアイビースタイルは、60年代のアメリカ東部の名門私立8大学「アイビー・リーグ」に通う上流階級の学生たちによる、敢えてお金をかけずに、ボタンダウンシャツや三つボタンブレザー、コットンパンツなどをカジュアルに(ときに野暮ったく)着崩すチープシックの走りとも言えるファッションです。

VANの創業者である故・石津謙介氏は、アイビーを日本に浸透させるために、カジュアルな服装を少しだけドレスアップする「カジュアルアップ」という概念を提唱しました。一方で、beautiful peopleでは、今やドレスアップのための洋服になりつつあるトラッドウェアを、敢えて着崩す「ドレスダウン」というテーマを追い続けてきました。

今シーズンのコレクションでは、beautiful peopleが追求してきた「ドレスダウン」と、VANが提唱したコンセプト「カジュアルアップ」をミックス。タッターソールのボタンダウンシャツを繊細なウールでしなやかなブラウスに、グレンチェックのパンツをドレープが優雅な超ワイドパンツにするなど、一見クレイジーにも見えるような極端にボリュームアップした新しいトラッドを提案しています。

3. 日本ファッション界の父・石津謙介氏

beautiful peopleがVANとコラボレートした2011年は、奇しくも石津氏の生誕100周年の年にあたります。もはや彼の影響を避けて洋服を作ることは難しいと言われるほど、日本のファッション界に大きな足跡を残した石津氏は、1951年に大阪でVANを設立し、55年に東京に進出しました。その後、当時アメリカでも注目されていなかったアイビー・リーガーたちのファッションに目を付け、『MEN'S CLUB』をはじめとするメディアとともに、日本の若者たちに、アメリカの自由主義、民主主義への憧れを掻き立てながら、新しいファッション、文化、ライフスタイルを浸透させたのでした。

「TPO」「トレーナー」「スタジャン」「Tシャツ」「チルデンセーター」など、ネーミングの天才と言われた石氏が定着させたファッション用語は数知れません。石津氏が提案してきた言葉や仕掛けはbeautiful poepleにも大きな驚きを与え、「新たな価値観を提案し、社会生活を向上させる」というブランドコンセプトを改めて見つめ直させてくれるきっかけにもなりました。

4. 限りなく本物に近いイミテーション

デザイン上の細かい規定が多かったアイビーファッションを日本に輸入するにあたり、VANは、トップスとスラックスの組み合わせ、シャツの色、柄、ボタン、靴など、それぞれに厳格なルールを定め、自分たちのスタイルを模索し始めていた戦後日本の若者たちに、雑誌などのメディアを通して、「ねばならぬ」式論法でアイビーの精神を植えつけました。

頑固なまでにディテールにこだわった、「限りなく本物に近いイミテーション」「オリジナルを超えたコピー」を作るという強い思い。その徹底した姿勢が、本国アメリカ以上に、トラッドスタイルを日本に定着させることになりました。beautiful peopleでは、そんなVANの姿勢に共感しつつも、現代の時代性を考え、「ねばならぬ」精神をあえて否定することで、新しい視点でトラッドスタイルを解釈していくことを目指しました。

5. 現代の視点で解釈した定番アイテム

今回のコレクションでは、60年代当時、若者の憧れだったVANのロゴワッペンをLEDで光るワッペンに置き換え、VANのロゴを潜ませたグラフィックTシャツを作り、VANの代名詞であるスタジャンやレジメンタルジャケットをキッズサイズに変えるなど、VANがリリースしてきた多くの定番アイテムを、beautiful poeple独自の視点で作り替えています。また、スポーツとファッションの融合を図り、当時VANが結成したアメフトチーム「東京ヴァンガーズ」のユニフォームをモチーフにしたワンピースでは、防具を入れるためのゆとりが、絶妙なシルエットと丈を創り出しました。

時代を築いてきたVANの定番アイテムにbeutiful peopleの新しい視点とユーモアを加えることで、実体験ではVANを知らない若い女性でも憧れを抱けるA”VAN”TGARDEなVANを提案しています。

6. 伝説の紙袋

東京オリンピック景気に沸く1964年、銀座のみゆき通り周辺には、元祖ストリートファッションとも言われる「みゆき族」の若者たちが集まっていました。アイビーストライプやマドラスチェックの半袖ボタンダウンシャツ、黒のニットタイ、くるぶし丈のコットンパンツやバミューダパンツを身に纏う彼らにとって、VANの紙袋を持ち歩くことは、ある種のステータス。あるとき、銀座にたむろする「みゆき族」を問題と感じた警察が、その元凶とみなされていたVANの石津氏に「みゆき族」への対応を迫ったところ、石津氏は、来場者全員にVANの紙袋を渡すという条件で、若者たちを一同に集め、そこでアイビーやVANへの熱い想いを伝えたのだとか。今回のコレクションでは、当時絶大な人気を誇った伝説の紙袋を、ヌメ皮の本格的なレザーバッグに仕立て上げています。

7. 世代を超えるオーセンティックな服作り

当時の熱狂的なVANブームが去った今もなお、祖父や父親から譲り受けたVANの洋服を着続けている若いファンがいるといいます。そこには、VANが追求してきたワンシーズンでは終わらない上質でベーシックな服作りへの姿勢が現れている。中には、世代を超えて長期間着続けることで、ようやく身体に馴染んでくるコートなどもあります。

時代を超えて親から子、孫へと引き継がれ、着る人のパーソナリティや時代性に応じて、見え方が変わる洋服。そんなオーセンティックな服作りこそが、VANの大きな魅力なのです。ベーシックから逸脱せずに、着る人のパーソナリティを表現できる服を作っていくことは、これまでに親子で共有できるキッズウェアなどを提案してきたbeautiful peopleにとっても、追求し続けていきたい大きなテーマになっています。

8. 引き継がれるVANの遺伝子

アイビーの教科書と言われている『TAKE IVY』は、VANが企画した『アイビー映画』撮影の際に、写真家・林田昭慶氏がアイビー・リーグ8校を回り、本場アイビー・リーガーたちの日常を撮影した写真集です。当時のアメリカの若者のファッションを知ることができるこの本は、昨年復刻版が出版されるまで、アメリカの古書店でも1000$の値がついていたほど、本国にも大きな影響を与え続けている貴重な資料になっています。

この『TAKE IVY』の復刻からもわかるように、VANが当時の日本に広めたアメリカ生まれのアイビースタイルは、国を超えて現代に引き継がれ、昨今の世界的なアメトラ(アメリカン・トラッド)ブームの礎を築いたのでした。

※ 2012年に公開される3D映画『ALWAYS 三丁目の夕日’64』では、東京オリンピックが開催された1964年が舞台となり、当時の若者を象徴するファッションとして、VANが提供する衣装も登場しています。


  • 「ALWAYS 三丁目の夕日 ‘64」


  • 写真集「TAKE IVY.」

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