about Chrome Free Leather
ビューティフルピープルの骨組みともいえるレザー。
人類の誕生から現在にいたるまで時代にあわせて多様な形で共存してきたレザーは、最古の素材とも言えます。その変遷の過程において、原皮から加工、仕上げに至るまでの技術によりさまざまなレザーが誕生しています。その中でも、ビューティフルピープルのSpring 2024 Collectionであらたに登場する素材がクロムフリーレザーです。
クロムフリーという名の通り、環境負荷が高いとされるクロム剤を使用せず、ゼオライトという自然鉱物を用いた新しいなめしの手法で作成されたレザーです。また、ビューティフルピープルのレザーは、表面に樹脂系の仕上げ剤を用いていません。牧畜や酪農などの畜産の副産物として共存してきたレザーを、可能な限り自然環境を損なうことなく、レザー本来の経年変化を感じるために仕上げ剤の使用を控えています。しかし、仕上げ剤を使用したレザーに比べると、一般的にみなさまの思う高品質とは異質な素材です。
ビューティフルピープルのレザーは、
人で例えるならば、すっぴんの素肌なのかもしれません。
すこしのシミやキズもあるかもしれません。
ケアに手間がかかり、扱いに気をつかうかもしれません。
しかしその生肌は、もっともナチュラルであり、もっとも素直な表情があります。
私たちは、レザーは繊細な生地の1つと考えています。
メリットとデメリットを正しく理解すること、
その1着に愛情をもって永く大切に着ること、
そしてともにエイジングを重ねゆくこと。
レザー本来の美しさを感じることができるもの、それがクロムフリーレザーです。
抜けるようなあざやかな白の発色
クロムフリーレザーの最大の特徴は、なめされた下地のレザーが抜けるようなあざやかな白色に仕上がることです。
『なめし(鞣)』とは、レザーを作成する上で必要不可欠な工程です。動物の原皮は時間の経過とともに徐々に硬化し、やがて腐敗します。その劣化を防ぐため、汚れや毛を落とし、皮を柔らかくする作業を『なめし』といいます。このなめしを行うことで、皮は耐久性と保存性の優れた革(レザー)へと生まれ変わります。
なめしの手法はいくつかありますが、代表的なものとして、「クロムなめし」とクロム剤と合成タンニン剤を用いた「ベジタブルタンニンなめし」などがあります。ビューティフルピープルでは、様々な観点からどちらにも属さないゼオライトを用いた新しいクロムフリーなめしを採用しています。
クロム剤を一切使用せずになめすことは、非常に手間と時間を要します。一方で、クロムなめしは、短時間で原皮をなめすことができるなど効率的な手法のため広く採用されています。しかし、クロム剤の副作用で、その下地は青みがかったものになり、染色時に色がくすむという欠点があります。
環境的な観点もありますが、抜けるような白い下地による発色の良さを引き出すために、私たちは手間と時間をおしまずクロムフリーなめしを採用しています。
すっぴんの魅力をたのしむレザー
ビューティフルピープルはシープレザーです。羊の種類は、主に毛足の長いウールタイプと短毛のヘアータイプに分別されます。ウールタイプは、シボ感が細かくスポンディッシュな質感ですが、強度面に課題があります。一方、ヘアータイプは強度があるものの、表面のシボ感が大きく深く、硬い質感です。ビューティフルピープルでは、ややヘアータイプに近い品種で、キメの細かさと強度、弾力をあわせもつ原料を使用しています。その原料の魅力を活かすために、仕上げ剤を使用していません。仕上げ剤を使用しないことは素材本来の表情を引き出しますが、デメリットもあります。
表面に樹脂系の仕上げをしない素上げの革のため、生体傷や部位による見え方の違い、染色による色むらなどはカバーされません。また、染色堅牢度(どれだけ深く染色されているか)も上がらないため、過度な摩擦や負荷がかかった場合は、色落ちや移染、また雨など水にぬれた際にはシミが発生するリスクが伴います。
素上げの革は、人間に例えるなればすっぴんの状態です。肌触りは革本来の柔らかさと滑らかさがありますが、その反面非常にデリケートな状態です。仕上げ剤を使用することで、車の塗装のような水にも汚れにも、キズにも強い革にすることは可能ですが、本来の風合いからは程遠いものとなります。
私たちはレザーに対して、「高品質なものはイージーケアであり丈夫である」というステレオタイプなものとはすこし異なる考えをもっています。私たちにとっての高品質とは、素材ならではの魅力が最大限活かされることと考えています。
色落ちすることもあれば、キズがつくこともある。汚れることもある。しかしそれらは味であり、レザーにしかない経年変化です。レザーの最大の魅力である『あなただけのエイジング』を楽しめること。それに勝るものはありません。