



抜けるようなあざやかな白の発色
クロムフリーレザーの最大の特徴は、なめされた下地のレザーが抜けるようなあざやかな白色に仕上がることです。
『なめし(鞣)』とは、レザーを作成する上で必要不可欠な工程です。動物の原皮は時間の経過とともに徐々に硬化し、やがて腐敗します。その劣化を防ぐため、汚れや毛を落とし、皮を柔らかくする作業を『なめし』といいます。このなめしを行うことで、皮は耐久性と保存性の優れた革(レザー)へと生まれ変わります。
なめしの手法はいくつかありますが、代表的なものとして、「クロムなめし」とクロム剤と合成タンニン剤を用いた「ベジタブルタンニンなめし」などがあります。ビューティフルピープルでは、様々な観点からどちらにも属さないゼオライトを用いた新しいクロムフリーなめしを採用しています。
クロム剤を一切使用せずになめすことは、非常に手間と時間を要します。一方で、クロムなめしは、短時間で原皮をなめすことができるなど効率的な手法のため広く採用されています。しかし、クロム剤の副作用で、その下地は青みがかったものになり、染色時に色がくすむという欠点があります。
環境的な観点もありますが、抜けるような白い下地による発色の良さを引き出すために、私たちは手間と時間をおしまずクロムフリーなめしを採用しています。
すっぴんの魅力をたのしむレザー
ビューティフルピープルはシープレザーです。羊の種類は、主に毛足の長いウールタイプと短毛のヘアータイプに分別されます。ウールタイプは、シボ感が細かくスポンディッシュな質感ですが、強度面に課題があります。一方、ヘアータイプは強度があるものの、表面のシボ感が大きく深く、硬い質感です。ビューティフルピープルでは、ややヘアータイプに近い品種で、キメの細かさと強度、弾力をあわせもつ原料を使用しています。その原料の魅力を活かすために、仕上げ剤を使用していません。仕上げ剤を使用しないことは素材本来の表情を引き出しますが、デメリットもあります。
表面に樹脂系の仕上げをしない素上げの革のため、生体傷や部位による見え方の違い、染色による色むらなどはカバーされません。また、染色堅牢度(どれだけ深く染色されているか)も上がらないため、過度な摩擦や負荷がかかった場合は、色落ちや移染、また雨など水にぬれた際にはシミが発生するリスクが伴います。
素上げの革は、人間に例えるなればすっぴんの状態です。肌触りは革本来の柔らかさと滑らかさがありますが、その反面非常にデリケートな状態です。仕上げ剤を使用することで、車の塗装のような水にも汚れにも、キズにも強い革にすることは可能ですが、本来の風合いからは程遠いものとなります。
私たちはレザーに対して、「高品質なものはイージーケアであり丈夫である」というステレオタイプなものとはすこし異なる考えをもっています。私たちにとっての高品質とは、素材ならではの魅力が最大限活かされることと考えています。
色落ちすることもあれば、キズがつくこともある。汚れることもある。しかしそれらは味であり、レザーにしかない経年変化です。レザーの最大の魅力である『あなただけのエイジング』を楽しめること。それに勝るものはありません。